小石丸を呼ぶ木-大瀧神社境内-

所在地:犬上郡多賀町大滝

 既存の神様は何処にいるのか?普通に考えれば神社に鎮座していますが、これは、7世紀以降、仏教の影響を受けて迎えられた神様の姿であり、本来の神様とは性格を異にします。
 では、本来の神様とは?それは、自然に宿る気配、或いは自然そのもの。と考えています。ではでは、その神に逢うには何処に行けばよい?自然の気配ですから、神様はその当たりに漂っています。でも、漂い続けるとさすがの神様も疲れてしまいますから、お休み処が必要になります。それを難しく言うと「依り代」となります。では、どんな処に神様は依りつき宿るのでしょうか?それは目立った自然物が選ばれます。典型的なポイントが巨木(神木)や大磐(磐座)です。

 そこでまずは、多賀町大瀧に鎮座する大瀧神社境内に立つ「小石丸を呼ぶ木」を紹介したいと思います。

  大瀧神社は、犬上川が里に向かって流れ出る地点に所在します。その出口付近は、地形が劇的に変化し、激流を為しています。地元ではここを「大蛇ヶ淵」と呼んでいます。この名前のいわれはこう語られます。
 「昔、犬神川の上流に人に災いをなす大蛇が棲んでいた。是を退治しようと日本武尊の長男、稲依別は、愛犬小石丸とともに山中に分け入った。しかし大蛇は現れず、疲れ果てた稲依別は川の畔で眠りこけてしまった。その時、小石丸が激しく鳴き立てた。寝起きの悪い稲依別は「うるさい!」とばかりに、刀で小石丸の首を刎ねてしまった。すると小石丸の首は傍らの松の梢に飛び上がり、何者かと戦う気配がしたかと思うと、大蛇の首に噛みつき、川に落ち、流れてしまった。稲依別を狙う大蛇にいち早く気付いた小石丸が、稲依別に危機を知らせるために吠え立てたのだった。小石丸を殺してしまったことを大いに悔やんだ稲依別は、小石丸の同体を手厚く葬った。この時から、ここは大蛇ヶ淵とよばれ、小石丸に因み川は犬上川となり、稲依別は犬上氏となった。」と。
 地元ではとても愛されている神話ですが、他所から来たものにとっては、何ともやりきれません。小石丸は何故殺されなければならないのか?

おすすめポイント

 そんなことを思いながら、境内を歩くと、杉の巨木が目に飛び込んできました。杉は、大蛇ヶ淵に面して立ち、二本の大きな枝を川に向かって広げています。そしてその前方には小石丸を祀る祠が建立されています。まるで稲依別が小石丸を呼んでいるように見えます。そこで、私が勝手に「小石丸を呼ぶ木」と名づけました。
 この木に宿るモノに語りかけます。
 「稲依別に殺された小石丸が余りにも可哀想。これはほんまの出来事?」
 木に宿るモノが応えます。
 「いや、ほんまは殺されてへんのや。大蛇は水の神。犬上川の水を田に入れたい下の人間が、川の神に祈り、水を採ろうとしたが、中々旨く工事が進まなかったんや。かなりの犠牲を出したらしい。なんとか水を採り、稲を植え稔りを貰った。川の水は稔りの水=稲の水=稲の神=いながみ=犬噛=犬上と変化して、犬神の話が生まれたんやけど、それでは面白くないし、江戸時代になって「忠」がもてはやされるようになり、小石丸が登場し、しかも主を護るために命を失う。ちゅう話になったんや。」
 「小石丸は稲の神の象徴なんやね。」
 「まあ、そんなところや。」
 「折角、犬が神様になってるんやから、いっそ犬の護り神にもなってもらったらどうですやろ。」「お前、上手いこと言うな。そりゃええわ。小石丸と稲依別にはペットの護り神になってもらお。」
 「ほな、あんたも如何にもなんかを呼んでいるような恰好やさかいに「小石丸を呼ぶ木」と名乗ったらどないでっか?」
 「ええな、そうしよ。是が広まったらお賽銭も上がるし、わしにも何やらエエ事があるかもしれん。そうなったらわしも、神様のやりがいがあるちゅうもんや。」
 

 こんな事で、大瀧神社は犬の守り神として、ただいま売り出し中です。ペットと暮らす方々、是非大瀧神社にお参り下さい。

アクセス

【公共交通機関】JRびわこ線河瀬駅下車、近江バス萱原線滝宮下車すぐ
【自家用車】名神高速道路彦根ICから20分

公益財団法人滋賀県文化財保護協会提供